「仕事はどない?」

 

2月中旬頃、ある先輩から突然こんなメッセージが届いた。ある先輩とは、シーガルズの先輩である池さん。

 

「ぼちぼちやってますよー。池さんはどないですか?」

 

昔から時折、池さんから唐突感たっぷりのメッセージをもらうことはあったが、仕事の話題は初めてだったため、やや戸惑いながらも当たり障りのない内容で返した。

 

すると、池さんからものすごい変化球が飛んできた。ここまでくると、意図を汲み取るとか行間を読むというレベルではないと自分を言い聞かせ、聞かれたことだけに素直に答える・・ということだけに徹した。

 

池さん)いいよ、関西くる!くる?

自分)え?!どういうことですかー?

池さん)関西に住んでるんか?

自分)浅草ですよー

池さん)関西は仕事でこないの?

自分)たまに研修しに行きますー。仕事くれはったらナンボでも行きます笑

池さん)そうか!また来る時連絡して!

自分)関西行く時は連絡しますねー。メシ行きましょう!

 

何に対する「いいよ」なのか、そして、いきなりの「関西くる?」にはさすがに参った。他の人間とのやり取りがクロスオーバーしているかのようにも思えるが、あまり深く読み取ろうとする必要はないと自分に言い聞かせていると、こんなメッセージが届いた。

 

池さん)本社に営業いったら?池之上の後輩ですって社長あてに。

大野)ありがとうございます。研修ニーズありそうですかね?社長につないでもらえますか?

池さん)いいよ。名刺会社のアドレスに送って。

大野)名刺を送りますので、会社のアドレスを教えてもらえますか。

池さん)×××@△△△△.co.jp

 

「仕事くれはったらナンボでも行きます笑」と送ったものだから、変に気を遣わせてしまった、申し訳ない・・という気持ちが半分と、社長宛に行くのは良いが、社長と池さんとの間柄がまったく見えない中、果たして取り次いでもらえるのだろうか・・という不安な気持ち半分が入りまざっていた。

 

でも、先輩の善意に甘えないわけにはいかないと考え、いろんな覚悟を胸に、池さんのアドレス宛にPDF化した名刺をメールした。

 

それから数日経つも、池さんから連絡がない。忘れられてるのかなあーと思いながらもプッシュするわけにもいかない。気長に待つことにした。

 

そして、今週火曜日。

 

なぜか携帯に「以外局番06」からはじまる、見知らぬ番号から着信とメッセージが残っていたので、恐る恐る再生ボタンをしてみると、「折り返しください」と池さんからのメッセージが残っていた。

 

池さんの会社の固定電話の番号なのだろう。すぐさまかけ直し、池さんに取り繋いでもらうと、「社長が会ってくれるみたいやから本社に連絡してみて。なんかニーズもあるみたいやで。」と教えてくれた。

 

会社にいるからなのかもしれないが、いつになく淡々とした話しっぷりの池さんに違和感をおぼえつつも、自分はというと、取引先のデスクで仕事をしている最中にも関わらず、思いがけない連絡に興奮しているのが自分でも分かった。

 

なんかうまく表現できないが、池さんが忙しい最中、忘れることなく、わざわざ社長と連絡を取り合ってくれ繋いでくれたということがたまらなく嬉しかった。

 

そして、社長とのアポイントの日時が決まった後も、池さんとのやり取りが続いた。このあたりから、メッセンジャーでのチャットのようなやり取りではなく、いわゆるメールでのやり取りになった。

 

そして、そのやり取りのひとつひとつは、驚きと感動の連続だった。

 

池さんと社長とのメールのやり取りを共有してくれたり、仕事のニーズの詳細を教えてくれたり・・・。

 

最も驚いたのは、アポイント当日に同席が予想される方々の情報を丁寧に教えてくれたこと。名前、部署、年齢からはじまり、その方々がどんな方なのかをイメージするための特記事項など。

 

自分から頼んだわけではないのに、先回りして次々と教えてくれた。

 

偉そうな表現にはなるが、誤解を恐れずにいうと、メールのやり取りを通して日頃の池さんの仕事ぶりが手に取るように分かった。

 

そして、昨日11時に日本橋小伝馬町にある本社で社長と人事担当の方とお会いしてきた。

 

時間にすると、60分くらいのミーティングだったと思うが、「池さんファンクラブの集い」のような、それぞれがそれぞれに感じている池さんの好きなところを自慢し合う・・不思議な時間だった。

 

その中において、とても印象深い話があった。それは、池さんとメモについて。

 

人事担当の方がこんなようなことをおっしゃった。

 

「池之上さんは、いつでもどこでも人の話を一言一句聞き逃すことなく、手帳にメモをとられるんですよ。飲みの席であっても。以前ご一緒した時、手帳を持ち合わせていなかったのか、割り箸袋の余白に小さな字で一生懸命にメモをとられていたのを見てビックリしました。」

 

すると、社長がすかさず、こんなようなことをおっしゃられた。

 

「スケジュール管理システムにも予定の詳細までみっちりと書かれている。あそこまで細かく書いているのは池之上くらいだろう。その他業務に関しても、絶対に手抜きはしないし、諦めずに徹底的にやっている姿が印象的だね。スポーツで培ってきたことが実践してるんだろうね。」

 

お二人から仕事場面における池さんの活躍ぶりをいろいろ聞いていると、昔の記憶や断片的な情報をもとに、仕事場面における池さん像を勝手に作り上げてしまっていた自分がとても恥ずかしくなってきてしまい、懺悔の念も込めて、自分の気持ちを吐露してしまった。

 

「たしかに、手帳にメモを取られるのは知っています。でも、わたしはその昔、池之上さんがお客さんとの会話や約束を忘れてしまうから仕事にならない・・だから見るに見かねた上司がメモを取らされていると耳にして、すっかりそうなんだと思い込んでいました。」

「そんなこともあり、仕事における池之上さんを勝手に想像していたのですが、今回のアポイントに際して、池之上さんから届くメールの内容はというと、いい意味で期待を裏切るものばかりで、内容を見る度に心打たれ、ひどく考えさせられました。」

 

すると、また社長がすかさず、こんなようなことをおっしゃられた。

 

「昔はそうだったみたいだね。本人も話していたし聞いているよ。古くからいる人間の中には、昔の印象だけを取り出して、忘れっぽい人間とレッテルを貼っている人間もいるみたいだけどね。私は2年前にこの会社にきて社長に就任したから当時のことはよく知らない。いまの池之上しか知らない。」

 

続けて、こんな言葉を付け加えられた。

 

「会社は人だから。人を信じること、良い所を見つけて、褒めて、伸ばしてやることが大事だと思ってるんですよ。」

 

そんな話を聞きながら、池さんからのメールに書かれていた「社長にはとても可愛がってもらってるねん。当日よろしく言っておいてな。」の意味がよく理解できた。

 

そして、池さんの話題でさんざん盛り上がった後、ようやくビジネスの話へと移り、リードブロッカーのことや大野洋のことに少し触れただけの状態にも関わらず、4月に予定されている中途入社者向けのフォロー研修の場にて、講演機会をくださることになった。

 

池さんに御礼と報告をすると、「そうか、よかったな。」とだけ返事をくれた。

 

その時、ミーティングで社長が話されていた一言を思い出した。

 

「池之上はすごい選手だったんでしょ。でも彼は一切ふんぞり返るようなことはしないね。とても謙虚なのも好きなところだよ。」

 

まったく同感である。

 

今回の仕事の話にしろ、池さんが自分の知らないところで、すべてお膳立てしてくれたのでは・・と思ったりしている。

 

とにかく、感謝である。このご縁を大事にしたいと思う。