最近、都営バスを積極的に利用している。都内には、バスが縦横無尽に走っていて、目的地によっては、電車よりもバスを利用した方が便利だったりする。

 

バスに乗ると、決まって最後部の5人掛けの座席に座る。最後部席というのは、ほんの少しだけ高く位置しているため、車内全体を見下ろすことができて、どことなく気分が良い。閑散としている時などは、調子に乗って、最後部席の中央に陣取ったりするが、もうたまらない。

 

そもそも、なぜ最後部席の5人掛けに座るようになったのかというと、その昔2人席に座っていた際、超満員にもかかわらず、誰ひとりとして自分の隣に座らない・・という何とも寂しい現実にさらされたことがきっかけで、それ以来、できるだけ人様に迷惑をかけまいと、最後部へと引っ込んでいる自分がいる。

 

でも、実際のところは、5人掛けにもかかわらず、自分が座ることによって、4人しか座っていない時もあるし、類は友を呼ぶ・・・ではないが、デブたちが最後部席に集まってきて、とんでもなく窮屈で暑苦しい思いをした経験もある。

 

つい先日も、都営バスに乗って、お客さんのところへと向かった。

 

浅草寿町という停留所から乗車し、いつもどおり最後部席を陣取り、車内全体を見渡していた。すると、浅草寿町から2つ3つ先の停留所から小さな男の子がお母さんに手を引っ張られ乗車してきた。

 

見るからにわんぱくそうな男の子で、お母さんが手を離そうものなら、チョロQのごとく飛び出しそうなくらいの、ハイテンションぶりだった。それに対し、お母さんはというと、朝だというのに、信じられないくらいにテンションが低く、息子に困り果てている様子だった。

 

その様子がとても微笑ましくて、2人のことが気になりはじめた。

 

「カワイイな〜。何歳くらいやろう。4歳か5歳といったところかな〜。」

 

自分の息子の成長と重ね合わせてみたりしながら、ふたりのかけ合いを観察してしまった。

 

まもなくすると、お母さんは息子に対して、降車ボタンを押すように指令した。

 

ところが、息子はというと、窓の外を走る車に完全に気が取られていて、いっこうにボタンを押そうとしない。呆れ果てたお母さんが自らボタンを押そうとすると、とたんに息子は不機嫌になり、お母さんの手を払いのけ、降車ボタンを押した。これがまた面白かった。

 

無事、停留所に着くと、運転手さんにお礼を告げて、お母さんに手を引っ張られながらも停留所に向かって、めいっぱいジャンプして降りて行った。

 

「ありがとうございまちた〜!」

 

車内に響き渡るほどの威勢のいい声を耳にし、一瞬固まってしまった。やんちゃ坊主だと思っていたら、なかなか礼儀のいい子やないか!悪いクセで、降りていなくなった男の子のことを思い出しながら、どうでもいいことをあれこれ考えはじめた。

 

老若男女かかわらず、礼儀正しいって、大事だよな。気持ちがいい。俺も見習わなあかんな・・。果たして、お母さんが教えこんだことなんやろうか?それとも、男の子が自らの判断で、お礼を言ったんやろか??

 

 

でも、お母さんも含め、大人たちは誰一人としてお礼など言わない。そんな中、自らの意志で、お礼を言うのは考えにくいな・・。だとしたら、お母さんが教えてたんか。しかし、お礼を言わない大人たちに対して、違和感をおぼえないんやろか?

 

 

ていうか、そもそも、何に対するお礼なのか?目的地まで無事送り届けてくれたことへのお礼??でも、それへの対価は支払ってるしなー。あっ!!小学生以下はたしか無料だったな。だから、子供だけがお礼を言うんか!いやいや、そういう問題ではないな。まあ、安全運転してくれた運転手さんへのお礼ということにしておこう。

 

 

だとしたら、バスだけでなく、電車や飛行機に乗った時も同じようにお礼を言うべきじゃないか。果たして、どうしてるんやろう??

 

 

いやいや、人のことはともかく、自分はどうやろう???タクシーに乗った時なんかは、必ず降車時にお礼を言う。でも、バスに乗った際にお礼を言うことはまずないな。

 

 

いや、以前はあったぞ!後方の扉から乗車し、前方の扉から降りていた時代は、運賃を支払って降車する際に、お礼を言っていたはずだ。前方の扉から乗りこみ、後方の扉から降りるようになってからおかしくなってきたんやな。ということは、電子マナー化が引き起こした弊害なのか?!

 

 

いや、ちょっと待てよ。最近でも、終着点で降車した時は、お礼を言った気がする・・。終着点の場合、前後両方の扉が開く。前方から降車する場合にのみ、お礼を言うのか。ということは、なんとなく、サービス提供者の顔が見えるかどうかといったあたりがポイントなのかなー。

 

自己完結ではあるが、うまい具合にまとまったタイミングで、停留所に到着したこともあって、どことなく清々しい気持ちのまま、バスを降りて、お客さんのところへと足を進めた。

 

到着すると、朝だったこともあり、ちょっとした小話がてら、バス車中で見たこと、考えたことを一部始終話してみた。すると・・・。

 

「なんかややこしいことを考えるんですね・・・。で、大野さんは、もちろん運転手さんにお礼を言ったんですよね!?」

 

答えは、「言ってない・・・」である。

 

礼儀正しい男の子の姿を見て、ごちゃごちゃとくだらないことばかり考えるだけ。肝心なことをひとつも学習していない。純粋な子供は大人にいろんなことを教えてくれますよね・・・などと、その場を笑いで切り抜けながらも、今後は改めようと心に誓った朝だった。

 

それからというもの、男の子のように、降車時に元気いっぱいとはいかないが、前方の扉から乗車する際、PASMOをかざす「ピッ」の音と同時に、「ありがとうございます!」と運転手さんにお礼を言うようにしている・・・。

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