先月、パソコンのデータを消去してしまった。

 

誤消去ではない。自らの意志のもと消去をしてしまった。なぜゆえに消去したかというと、最近パソコンの動作が鈍くなってきていたからだ。

 

動作が鈍いおかけで、何をするにもストレスを感じはじめたある日、以前から気になっていたあるフォルダが原因ように思え、そこにある古いデータをいっさいがっさい削除した。勢いよくゴミ箱からも削除した。

 

ちなみに、あるフォルダとは、一度開いたデータの履歴だけがそこに残っているものだと自身で思い込んでいたにすぎず、特に調べることもなく、知人に確認することもしなかった。超がつくほどの機械音痴であるにもかかわらずだ。

 

たしかに動作も軽やかになり満足気でいたのだが、次の瞬間目を疑った。

 

資料作成のために、過去のデータを引用しようと自身で管理しているフォルダを覗きにいくと、フォルダは存在しているのに、中身が何もない。そんなはずはあるまいと他のフォルダも覗いて見るもスッカラカンである。

 

そこではじめて調べるという行為をし、あるフォルダと自身で管理しているフォルダとが紐付いているという事実を知った。紐付いているわけだから一方を消去すれば、もう一方も消去されるということになる。

 

あるフォルダとは、絶対に触ってはいけないフォルダだったのだ。。。

 

外付けハードも所有しているが、そこには顧客情報・個人情報と呼ばれる類のものだけが保存されており、過去のデータは見当たらない。

 

この先、仕事できない・・・・。

もうこの世の終わりだ・・・。

 

大げさでもなんでもなく、そのくらいの絶望感だったのを今でも鮮明に覚えている。

 

すでに深夜12時をまわっていたが、死に物狂いで復旧策を調べるも、どれも信憑性に欠ける。Appleのカスタマーセンターに問い合わせるのが確実だがすでに受付時間が終わっている。

 

居ても立っても居られない状態ではあったが、無知な自分が下手な動きをとるくらいなら、ここはぐっとこらえて、翌日専門家の指示を仰ぐのが賢明だと言い聞かせ寝ることにした。

 

翌日Appleのカスタマーセンターに連絡するも、復旧は困難とのこと。もう八方塞がりかと思った瞬間、ある企業を見つけた。

 

「データ復旧実績
日本一!」

 

自分で自分のことを一番と言う輩にろくな奴はいないという持論もあり、大きく疑ったが、そんな悠長なことも言ってられないため、ある企業のオフィスへと向かい説明を受けた。ど素人ながら疑う余地はひとつもない。

 

ただ、消去してからこれまでの間、すでにデータ破損が進行しているため、すべてが復旧するわけではない。そもそも形式によっては復旧困難なものもある。決して安くない金額ではあったが、思い切って依頼することを決心した。

 

それから3日後。先方からデータ復旧作業完了の連絡があった。

 

正直、信じられないほどのデータが復旧していた。あのスッカラカンになった状態からこの状態まで復旧させるとは凄い。しかし、肝心のPowerPoint資料の復旧率が極端に低かった。復旧率が低いとは聞いていたが・・である。

 

もうこうなったら、腹を括るしかない。

 

何に対して腹を括るのかといえば、過去のデータには頼らず、ゼロから作成するということに対してである。自己責任と受け止め、時間と労力を惜しまずに粛々と作業するしかないと。

 

かれこれ2週間が経過した。面倒だと思うこともある一方で、ゼロから思考するいい訓練になっている。おかげで新たなアイデアとも出会えたりする。悔し紛れの発言のようにも聞こえるだろうが、本当にそう思うのである。

 

過去のデータがあった頃はというと、ある提案書を作成するとなると、頭のコンピューターがピピッと働き、過去のA資料のこの部分とB資料のこの部分、そしてC資料のこの部分をつなぎ合わせながら、今回の提案をまとめ上げようとイメージを固めてから着手していた。

 

とても合理的ではあるが、内容としてはいかがなものだろう・・・と今となっては思う。誤解を恐れずいえば、手抜きであり怠慢だったとも言える。

 

そう思えば、よりクライアントに立脚した企画が思考できるというのは良いことだし、先にも書いた通り新しいアイデアと出会えるというのは新鮮であり引き出しにもなる。何より楽しい。

 

もちろん、各種フォーマットや過去にうまいこと表現した絶妙な資料を思い出してはひどく悔やむこともある。

 

同じことを繰り返さぬよう、戒めのためにデスク横に貼付した、データ復旧作業時の請求書を睨みつけながら、外付けハードに保存するという作業がルーティンになっている。

 

「過去を捨てないと、新しい何かは見つからない」紛れもない事実ではあるが、それと同時に何事にもバランスというものが大事であるということを学ばせてもらった。

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