自分自身を客観的に分析する

アメリカンフットボールは、練習や試合の一部始終を映像に残し、それらを用途に応じて最大限活用するスポーツでもあります。その用途のひとつとして、選手個々の成長を考える際の客観的な視点としても活用します。

営業や接客場面での実践力を高めるトレーニングのひとつとしてロールプレイングを実施する際にビデオ撮影して、自分自身や職場の先輩たちとともに振り返るといったことをしますよね。それと同じようなイメージです。

私がリクルーターをやっていた頃にも、学生との面談を想定したロールプレイングをやりました。ロールプレイングだけでは終わらず、実際の面談における学生との会話の一部始終を隠しカメラで撮影された経験もあります。面談を終えてデスクに戻ると、先輩達からその事実が明かされ、会議室にこもり映像を見ながら愛情たっぷりの厳しいフィードバックシャワーを浴びた経験があります。いま振り返ると、良い意味でも悪い意味でも慣れてきていたタイミングでしたので、映像を通して自分自身の立ち振る舞いや表情、個々のやり取りの中身を再点検する良い機会だったように思います。

その他にも、360度サーベイとよばれるものもあります。映像かデータかの違いはありますが極めて近しいのかもしれません。ともに働いている職場の上司・同僚・部下が記入したサーベイデータを集計し、他者から映っている自分自身の行動特徴を客観的に分析し、今後より成長するために何を行っていくのかを考える手立てとして活用するというものです。

日常の自分自身の言動を映像や他者からのフィードバックといった客観的な視点をもとに、自分自身、コーチやチームメンバーとともに分析するという作業は、紛れもない事実と向き合わなければいけませんので、プライドが邪魔したり、葛藤が起きたりするものですが、目を背けずに素直に受け止め、自分自身と向き合いながら考えてみることで、たくさんの発見があるものです。

原因究明作業を怠らない
思考を止めずにブレイクダウンする

もっと大切なことは、洗い出された◯と×(特に×の部分)の原因究明することを怠らないこと、何が問題のポイントなのかを明らかにするということです。

アメリカンフットボールで言うなら、選手個々の1対1のヒットを映像で振り返る際に、1歩目を正しい方向に出せているのか、ヒッティングポイントはずれてなかったのか、腕の使い方はどうだったのか、その時の姿勢の高さは適切だったのか・・などいくつかの仮説から課題を探っていきます。

仮に、相手にヒットしてドライブできない選手がしたとしましょう。何度も映像を確認した結果、問題として腕が上手に使えていないことが見つかったとします。そこで思考を止めるのではなく、もう一歩踏みこんで分析する必要があるということです。そもそもスタート時に腕を引いてしまうために使えていないのか、もしくは腕は使えているが脇が絞れていないのか、タイミングよく手を出し脇を絞って上手く腕を使えているが筋力が不足しているのか。それぞれ解決のための手段がまったく異なります。

見習いコーチ時代だった頃、先輩コーチに、「アホ!ぜんぜんブレイクダウンできてないやないか。手が使えてない・・そんなもんは誰が見てもわかることや。何が問題なのか?解決するためのポイントは?実際どういった練習を繰り返し行うべきなのか?を考え抜くことがコーチの仕事や。」とよく叱られたものです。

当時は評論家のごとく、選手個々の◯と×だけを伝えて終わることも少なくありませんでした。練習における選手の動きを見ていて、「何回言っても直らんなあ・・」とか「いつも言っているのに・・・」とついつい呟くことがあります。そんな時は一度立ち止まって冷静に考えるようにしていました。すると、ブレイクダウンできていなかったり、ブレイクダウンはできていたとしても選手と認識合わせやイメージの共有ができていないといったことが多々ありました。

先輩コーチは、さらにもう一歩踏みこんで、選手個々の課題解決に向けた方法、つまり練習メニューをも自ら開発できるコーチになれ!と口癖のように話していました。その先輩コーチの話になりますが、日常的にあれこれ考えては、「これ、どうや?!」と私を選手に見立て実験をしていました。実際、アメリカンフットボールでありながら、様々な競技の練習方法を参考にしてみたり、身の回りのありとあらゆる道具を最大活用しますし、即した道具が見当たらない場合は、自ら練習道具を作ることもしばしばありました。

今の時代、本場アメリカのNFLやカレッジで実践している練習方法に関する映像を見つけ出し、それを導入するといったことは容易に考えられることです。ただ、どこまでブレイクダウンを行い、選手個々の特性を踏まえた上で活用するのかがすごく大事なことだと考えています。方法論の良し悪しを問うつもりはなく、選手と向き合うコーチが考え続けることを止めてはいけないと私は考えるのです。

問題解決力を育てるのがコーチの役割

その先輩コーチのコーチングを受けた選手の多くが現役引退後も各方面でコーチをするという面白い事実があります。私もその一人なのですが。選手時代は、自分自身の課題を把握し克服するために、用意された個々の練習メニューに取り組むことで必死でした。しかし、徐々に自らの課題とその原因が掴み取れるようになり、これまで取り組んできた練習メニューの中から必要なものを選び、自ら取り組むようになりはじめます。そういったプロセスを通して、自ら成長実感を感じ取れるようになるのです。すると、これまでの苦しいだけだった練習にも意味を持たせるようになり、前向きに取り組むようになります。この段階までくると、例えば、伸び悩んでいる仲間がいた時に、自らの経験に基づき、自然と関わりを持ち、我がごとのようにアドバイスする、アドバイスだけでなく、ともに取り組むようになります。自らの関わりを通して、仲間が少しずつ変わっていく様子を見てしまうと、ついつい嬉しくなりドライブがかかり始めます。やがて、味をしめてしまい、気づいた時にはコーチの道へと進んでいる・・・。これは私なりの勝手な分析ではありますが、当たらずとも外れていないかなと思っています(笑)

ビジネスシーンに置き換えても同じではないでしょうか。部下や後輩の課題を把握するのは当然のことです。そこから先、直接的・間接的にどれだけ関わることができるのかが大事です。安易にセミナーに参加させたり課題図書を渡すだけでなく、半歩でもいいので踏みこんで、企業文化や業務内容、また本人の特徴を熟知しているからこその独自の解決方法を悩み考え、ともに取り組むことがリーダーの育成や企業風土の醸成を図る上でも大事なのではないでしょうか。

 

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