始まりがあるということは、必ず終わりがくるということ。
そして、終わりというのは、予期せぬ時にやってくる。

アメリカンフットボールもレギュラーシーズンが終わり、各方面から選手コーチの進退や来シーズンの布陣に関する情報が飛び交う季節になると、私自身しみじみと思い出す出来事があります。約2年前、2010年から2014年までの5年間コーチとして在籍していたオービックシーガルズからコーチ契約終了、事実上のクビを告げられました。大袈裟に聞こえるかもしれませんが。専業コーチではありませんでしたが、所属チームとシーズンごとの単年契約を交わし、一定の報酬をいただいていたという点においては、立派なプロコーチだったと言えます。長年にわたりお世話になったヘッドコーチとの面談にて、結論のみを告げられ、そのあと二言三言だけ言葉を交わし、部屋を後にしました。時間にすると、10分程度だったように思いますが、その場の光景を今でも鮮明に覚えています。

正直、契約終了を告げられた直後は、感情を整理できませんでした。まさか俺が・・・。なんで・・・。事実を受け止められずに、必死で正当化する自分、矛先を違う方向へと向ける自分、とにかく苛立ちや動揺を隠しきれない自分・・・。しかし、こういう結果になることを心のどこかで覚悟していたのでしょうか。冷静さを取り戻すのにさほど時間を要しませんでした。

そして、尊敬する先輩がよく口にしていた言葉が頭をよぎりました。『始まりがあるということは、必ず終わりがくるということ。そして、終わりというのは予期せぬ時にやってくる。だから、一瞬一瞬を大切に、全力で取り組まなければいけない。』経営コンサルタントをされている先輩なのですが、事あるごとに、鬼のような形相で、声を張り上げながら、クライアント企業の方々に話されていました。

また、これまでのアメリカンフットボール人生において、シーズン途中にもかかわらず、怪我や転勤によって、志半ばで引退を余儀なくされる選手、やむなく戦列を離れる選手を何人か見てきました。そのたびに、自己投影してみては、身の引き締まる思いでいましたが、結局のところ、自分事として受け止めていなかったことに気づかされました。

自信を糧に、さらに目線を上げて、チャレンジし続ける

何がこういう結果を招いたのかをじっくり振り返ってみた時、チームの結果や選手個々人の成長を、まるで自身の成果かのごとく受け止めている自分がいました。平たく言うと、自分の手柄にしていたのです。どうしようもない勘違い野郎です。

オービックシーガルズは、選手としても9年間所属したチームでもあります。現役引退後は、富士通フロンティアーズで3年間コーチ経験を積んだ後、コーチとしてチームに戻ることになりました。現役時代にともにプレーをした選手やコーチも多くいましたから楽しみでもある反面、一度離れたチームに再び戻るという意味では、それなりの覚悟も必要でしたし、期待に応えなければいけないというプレッシャーもありました。加えて、富士通フロンティアーズ時代は、先輩コーチの援助を受けながらのアシスタントコーチに過ぎませんでしたから、その先輩コーチのもとを離れ、コーチとして独り立ちするという意味において、私としては大きなチャレンジでもありました。とにかく、3年間はチームの結果云々よりも、自分の置かれているポジションの役割を完璧にまっとうすることだけを考え、無我夢中で走り続けていました。一方で、チームは、あれよあれよという間に、三連覇という偉業を成し遂げていました。

チームは、四連覇、五連覇という大きな壁を乗り越えるべく、日々チャレンジしていた一方で、私はというと、プレッシャーや緊張感といったようなものから徐々に解放され、妙な自信をつけはじめていました。その妙な自信からなのか、オービックシーガルズのコーチである状態が未来永劫に続くかのような錯覚に陥っていたように思います。自信をつけたのなら、さらに目線を上げて、チャレンジすることにドライブをかけるべきだったと後悔しています。現役時代から長年にわたり経験してきているポジションだったこともあって、知っていること・得意なことに終始するあまり、次のステップを目指すための新しい知識・経験の獲得や苦手分野の克服するために地道に取り組むといったことを怠っていました。当時、チーム全体として、極めてチャレンジングな状態でした。その中にいて、現状に満足し足踏みを続けていたわけですから、まわりからすれば、私に違和感を覚えていたでしょう。そう考えると、遅かれ早かれ契約終了という判断を下されていたに違いありません。

自ら終わりを迎えることを意識する

私はこの出来事を一瞬たりとも忘れないように心がけています。現在、コンサルタントとして、いくつかのクライアント企業と年間契約を交わし、クライアント企業の方々ともにプロジェクトに取り組んでいるわけですが、その際に「自ら終わりを迎える」ということを肝に銘じています。企業間の契約がある中で、自ら終わりを迎えるというのは、プロジェクトスタート時にクライアント企業との間で、最終的な目指すべきゴール(状態)を決めて、いろんな状況を想定した上で、ゴールまでのストーリーを描きますが、その通りに進むことはほとんどありません。3ヶ月くらい前倒しで期限を設けることで、想定外のことにも臨機応変に対応できますし、順調に推進できた場合には、より精度を高める時間に充てることができますし、さらなる課題に取り組むことができます。それともうひとつ、当たり前のことかもしれませんが、決めた期限までに、私がいなくなっても、その状態が継続する環境をいかに作るかということも大事にしています。そのためには、クライアント企業の方々とともに悩み考え、ともに手足を動かし取り組むことが大切だと考えています。自分一人ができることといってもたかが知れています。チームを組んで、チームメンバーとともに協働する、そして、結果が出た時にはチームメンバーとともに達成感を分かち合うというプロセスをきちんと踏んでいれば、チームの結果を自身の手柄のように勘違いすることは絶対にありませんし、妙な自信をつけて慢心することもありません。

業績好調な時ならまだしも、業績が芳しくない時などは、契約更新できればなあ・・などという淡い考えが頭をよぎることもあります。淡い考えが頭をよぎるだけならまだしも、そのために頭とエネルギーを注いでしまいそうになることもあります。そんな時は、「いずれは必ず終わりがくる」「このお客様ともお別れしなければいけない時がくる」と自身に言い聞かせるようにしています。「いずれは必ず終わりがくる」「このお客様ともお別れしなければいけない時がくる」のだとしたら、どのように終わりを迎えるべきか明白ですよね。目線を少し先に向けて、正しい方向に思考とエネルギーを最大活用することではじめて、正しい結果が得られるものだと思います。

 

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