「働きがいのある会社」2年連続で国内第1位

自社製品であるIoTアプリケーションプラットフォーム「Torrentio」や、ビジネスバリューダッシュボード構築、アプリケーション性能管理サービス、Elasticスタックとx-packの導入支援など、ソフトウェアの領域で高度な技術サービスを提供している、アクロクエストテクノロジー株式会社。東京大学や京都大学、東京工業大学などの卒業生が大半を占める“高学歴ベンチャー”だ。そうした一面もさることながら、同社は「Great Place to Work(GPTW)」の従業員25~99人部門で「働きがいのある会社」国内第1位を、2015・16年度の2年連続で受賞。また、ベストセラー『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズで知られる法政大学大学院教授の坂本光司氏が審査委員長を務める「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞においても、2015年度の審査員特別賞を受賞するなど、社員がイキイキ働ける会社としても名高い。そんな企業風土を強力につくりあげているのは、ユニーク極まりない数々の“仕組み”である。その一部をご紹介しよう。

まず、最重要の根幹的な仕組みである「MA(Meeting of All staff)」、つまり全社員会議。月に一度、原則として全社員が参加し、ここで決まったことは即座に実行されるというルールがある。ここであらゆる仕組みの導入や変更、廃止が決められる、実質的な同社の最高議決機関だ。

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最重要の会議は全員が参加し全員の納得で決める

この運営に、同社の本質がよく表れている。まず、MAには次の“基本理念”がある。
「MAとは、Acro人として常に挑戦心を忘れず、AcroquestがAcroらしくあるために、決断し、変革していく場である」
この理念に基づいて、参加者は次の“鉄則”を守る必要がある。

1.私情をはさまない

2.徹底的に議論する

3.コミットできない話題の時は退出する

※コミットとは、自分自身に関わりのあることとして、責任をもつこと。

議案は会社の経営方針からレクリエーションの企画まで何でもアリで、社員が提出したものを議長団が選別する。担当者だけで決めても全体に影響しないような議案は採択されない。議論した結果どうするかは、全員が納得して決定とする。いくら時間がかかろうが、多数決は取らない。しかし、「たとえ意見が対立し、どれだけ議論が白熱しても、雰囲気が悪くなることはない」と取締役副社長の新免玲子氏は言う。
acroquest2そこにいる社員全員が議題を我が事ととらえ、問題解決のために考え抜いているからだ。「論理的でなかったり、事実に反する発言があれば、すぐ周りから指摘が出て議論の筋が戻る。だから、議論が堂々巡りすることも、お互いが感情的になることもない」(新免氏)のだ。

全社員の参加が基本ではあるものの、技術者集団ということもあり、中には議題を出すこともなく発言が極端に少ない社員もいる。そういう存在に対して「みんながエネルギーを使って一生懸命議論して決めたことの恩恵を、何も言わない人も享受するのはアンフェア」という意見が上がった。そこで、年代別に括って会議を分けてみたり、30分間発言しなかった人は会議室から退席し次の退席者があれば交代で戻る「30分ルール」を設けるなどした。しかし、いずれも決め手に欠いた。試行錯誤の結果、現在は発言が苦手な人のための傍聴席のような「サイレントゾーン」を設け、“聞くだけの参加”でも話を共有する姿勢を失わないようにしている。

会議で黙っているのは、意見がないわけではなく、人前で言うことが得意ではないだけ。MAの目的には、全体の連帯感を維持することが大きい。」

では、この「MA」でどんな仕組みが決められたのか。

「バリ金」と「ホメキンコン」でミスもいい行動も共有

例えば、「バリ金」と「ホメキンコン」。「バリ金」とは、会社が大切にしている「バリュー」に反するミスを犯したことのペナルティで、上司のみならず、後輩からでも注意されると100円の罰金を払わなければならない。その対象となるのは、部下の上司に対する態度として、例えば“I・B・M”(言っても・ぼーっと・無視する)、“N・T・T”(のろい・たるい・とろい)、“N・H・K”(生返事禁止)などのバリュー(行動基準)にもとる行動だ。
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「そんなことでいちいち罰金と思われるかもしれませんが、相手に対していちいち説教する必要がなくなり、当事者も潔く罰金を払うことで気持ちの切り替えができるという効用があります」と新免氏。「バリ金」を取られた社員は、オフィスの一角にあるベルをチリンチリンと鳴らし、「〇〇さんからI・B・M取られました!」などと全員に聞こえるように大声で報告する。そして、胸にカエルのバッヂをつける。“失敗を振りカエル”という意趣だ。

「ベルを聞いた社員は、仕事中でも拍手で応えます。これで失敗した者も気持ちを切り替えることができるわけです。社員の行動の良いことも悪いことも共有する風土、といえるかもしれません」

なお、カエルのバッヂが1日で7個たまった社員は、強制休養帰宅させられる。「それだけミスが発生するのは体調不良で、会社にいてもいい仕事はできないだろう」との判断による。

「ホメキンコン」は、反対によい行動を褒めるもの。何かいいことをしてもらった社員が、相手に100円とウサギのバッヂを渡し、ラッパを鳴らす。その際も、社員は仕事を離れ拍手して共有するのはいうまでもない。

社員の成長や業務効率化、連帯感、風を通し気持ちよく働くための仕組み

そのほか、次のようなものがある。

⚫️「倍返しDevセミナー」・・・外部セミナーに2回以上参加し、かつ社内でその内容のフィードバック会を開くことを条件に会社は1人あたり6万円の費用を負担。但し、条件をクリアできなかった場合は倍返しで12万円を懇親会に寄付する。

⚫️「AcroNote」・・・独自開発した、15分単位で予定を実績を記入する“万能”ノート。実用新案を取得している。ほかにも「ほうれんそうシート」や「SPAT MEMO」など独自のツールを工夫。

⚫️「メディテーション」・・・一日が終わる18時15分からの5分間、瞑想タイムに。オフィス内は消灯され、サンスクリットの音楽が流れる。気分をクリアにするとともに、これによる“動→静→動”という統一感が、無言の連帯感を生み出す効果がある。

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⚫️「TAMAPO」・・・「タマのポイント」の意味。タマとは新免氏のニックネームだ。MAに議題を提出する、忘年会で芸をして盛り上げるといった“貢献”をするとポイントがたまり、自分の必要とする業務用備品が特別に買ってもらえる。

⚫️「花一輪」・・・社員の誕生日に、ほかの社員が一輪の花をプレゼント。当該社員のデスクには花瓶が置かれ、その中に社員が「おめでとう!」と声をかけながら、一輪の花を挿していく。

⚫️「源内会」と「エレキテルボード」・・・エンジニアたちが、新しい発想でつくりたいもののアイデアを持ち寄る会議が「源内会」で、「エレキテルボード」はこれに参加したい社員が自分のアイデアを書いて事前に掲示しておくコルクボードのこと。エンジニア同士が自分のアイデアを競い合いながら画期的な製品を開発する機会になっている。

エンジニアや社員としてのベクトル、スタンスを決める場

こうした中で、とりわけ注目すべきは「全体査定(ハッピー360)」だろう。全社員の給与金額は全社員で決めるという“超ド級”のユニークな仕組みである。

手順としては、①自己申告、②マネージャーによる1次査定、③全社員による2次(最終)査定。③では、全員が当事者の査定点とその根拠、実績などについて一人ひとり真剣に議論する。ここでも、全員の納得が大原則だ。納得性を高めるために、自由応募で集まった社員による「査定コミティ」という委員会がこの場を仕切っている。

acroquest5「他人のことであっても、自分のことと同様にどのように成長し会社に貢献してきたのか、また今後はどうあるべきか、査定を通じて議論します。この機会は、給与金額を決める場というよりも、エンジニアや社員としてのベクトル、スタンスを決める場として非常に価値のあるものになっています」と新免氏は力説する。

冒頭で同社は高学歴集団であると触れたが、東大を出ていようが、社歴が浅かろうが関係なくその業績や貢献度が全員の前で丸裸にされる。後輩に追い抜かれれば、悔しい思いもするだろう。

「もちろん、社員はみな、この仕組みがあることを前提で入社していますし、全員でこれをやろうと決めていますから、全員前向きに受け止めています。後輩に抜かれたら、みんな爽やかにリベンジを誓っていますよ(笑)」

新免氏ら経営陣は、この制度を20年以上前から実践。当初は、口裏を合わせて談合する社員もいたというが、「そういう人は結局退職していった」と新免氏。そういった様々な紆余曲折を経て磨き込まれたノウハウが集大成されているのだ。

“はみ出し者”の自分たちが理想とする会社を

以上、同社のユニークな数々の仕組みを概観してきた。ではなぜ、こうした制度を取り入れてきたのか。新免氏は次のように語る。
「1991年3月に、代表取締役である夫とともに当社を創業しました。その理由は、夫も私も前職を不本意ながらも退職せざるを得ない苦い経験をしたからです。もとの勤務先では、利益を追求する上でその企業に合致する合理的な仕組みが整えられていたとは思いますが、上下の意思疎通がなく、働いていて面白くない環境でした。その環境に対して意見を言う“はみ出し者”は、非適応者とみなされるわけです。ならば、自分たちが理想とする会社をつくるしかない。その時から今日まで、その一心で取り組んできました。今は他社の社長様のベンチマークとして多数の視察をうけるまでにご評価いただくようになり、この信念で会社を創ってきたことが良かったのだと思います。」
なお、同社のユニークな経営手法については、新免氏の著書『会社を元気にする51の「仕組み」』(日本実業出版社)に詳しい。一読をお勧めする。

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会社名
アクロクエストテクノロジー株式会社
所在地
神奈川県横浜市港北区新横浜3丁目17番地2 友泉新横浜ビル5F
資本金
4100万円
従業員数
75名(2016年10月31日現在)
事業内容
パッケージサービス販売事業、システムコンサルティング事業、ミャンマーマーケティングサービス、システム開発・支援事業、飲食事業、職場改善コンサルティング
ウェブサイト
www.acroquest.co.jp