全国約4,500社の職人をネットワークし施工管理を実施

主に、全国展開するチェーン店の看板や、大手メーカーが量販店等に設置する販促物などの施工をプロジェクトマネジメントの手法を用いて管理しているgCストーリー株式会社。ビジネスモデルの特色は、全国の約4,500社の施工職人をネットワークし、各ステークホルダーとの意思疎通をIT化することで、スムーズかつ迅速なコミュニケーションを実現、サービスの付加価値を高めている点にある。この仕組みが最も生きるケースは、全国展開する大手チェーン店のロゴ変更で発生する看板の架け替えや大手メーカーの新商品発売における全国の量販店での販促プロモーションで発生する什器設置等の施工だ。

「gCストーリー(当時の社名はサイベイト)は、2005年創業時から看板施工という古い慣習の残る業界に独自のビジネスモデルで参入し、お客様の成長に合わせて柔軟に体制を構築することで差別化を図ってきました。現在では、この職人ネットワークを生かして、メーカーの販促プロモーションに関わる什器や各種販促物の施工といった領域の業務が増えています。」と経営企画部ゼネラルマネージャーの安部孝之氏は説明する。

実績としては、全国2,500店舗に展開するモバイルショップの看板施工、全国約3,000店舗および自動販売機約3万台におよぶ嗜好品メーカーの新商品ビジュアル貼替といったものがある。
「働きがいのある会社ランキング」3年連続でベストカンパニーそんな同社の従業員数は、約80名。「働きがいのある会社ランキング」の従業員数25~99人の部門で3年連続ベストカンパニーに選出されている。小規模の上に施工管理という地味な業態であるにも関わらず、東京大学や京都大学、早稲田大学や慶應義塾大学といった上位校の新卒学生を続々採用しているのだ。その大きな要因は、「全従業員が幸福で調和し、取引パートナー・顧客に感謝される存在であり、人類、社会の調和に貢献すること」という企業理念を掲げ、真剣にその実現を追求しているところにある。

この企業理念は、同社を創業した代表取締役社長の西坂勇人氏が「事業を行うのならば、その結果として幸せな人を一人でも多く増やしたい。そういう企業が結果的に繫栄する」と考えて定められた。

企業理念を構成する“大切にしている考え方”や“組織ビジョン”が、次のようにホームページに書かれている。

  • 大切にしている考え方:成長と貢献

「私たちは、貢献のために成長することで、誰かに感謝され、自分自身の周囲や社会が『幸せ』な状態であることを目指しています。この考え方を大切にし、日々体現することが社員・取引パートナーや顧客、社会の幸せだと考えています。感謝され、幸せな状態を創りだすために、常に『貢献すること、貢献する範囲を広げていくこと』を意識し、行動しています。貢献する範囲を広げていくためには、できることを誰よりも増やし、成長していく必要があります。

  • 組織ビジョン:あるべき組織を体現すること

「社会に良い影響を与え、貢献の輪を広げる組織。それをあるべき組織と位置づけ、その実現を目指しています。その為に、従業員が『成長と貢献』の価値観の中で毎日生き生きと働ける環境づくりに注力しています」

採用メッセージは「きれいごとをしようじゃないか」


「こうした考え方は、世の中では“きれいごと”なお題目と捉えられがちです。それは否定しません。そこで我々は、『きれいごとをしようじゃないか』という言葉を採用メッセージにして、いわば逆手に取る形で真剣に取り組んでいることを伝えています」と安部氏は話す。

世の中に貢献していくあり方として、まずは個人が目の前の人を幸せにし、その“輪”を順繰りに広めていくという考え方を取っている。しかし、個人の力だけでは限界がある。そこで、gCストーリーという組織の力でより広範囲に広げていこう、gCストーリーをそのためのステージにしようという考え方があるのだ。

この具体策として、「パーソナルミッション(PM)」と「gC guide」の2軸がある。

PMは、価値観が異なる個々の社員が“成長と貢献”という共通のベクトルに、どんなカーブやルートを描いて向かうのかをそれぞれ言葉にしたもの。

「いわば、“自分は人生をかけて何のために働くのか”という志です。例えば私は『感謝で縁を繋ぐ』としていますし、『愛を循環させる』『地球を満たす』と掲げている社員がいます」(安部氏)。

PMは、チームビルディングの際に必ずチーム全員で徹底的に共有される。それによって、意見対立があった場合も「彼のPMからすれば、そんな発言をすることも理解できる」などとお互いの関係性をポジティブに捉えることができているメリットがあるという。

人事考課は行動指針「gC guide」の実践度合のみ

「gC guide」は社員としての行動指針集だ。50ページほどの冊子に、100項目ほどの、人間力をどう高めていくかの行動指針とその意義などの解説が記載されている。稲盛和夫氏の「京セラフィロソフィ」や松下幸之助氏の経営哲学などを参考に西坂氏が練り上げたものだ。例えば、「gCが大切にすること」「幸せな人生を送るために」「仕事に当たって大切にすべきこと」「新しいことを成し遂げるために」「困難に打ち克つ日々の仕事」といったカテゴリーがある。「gC guide」は毎日の朝礼などで必ず触れるだけでなく、人事考課の指標に集約させることで、実践エンジンとしているのだ。

同社では、社員の階層を“入門者”“小習”“錬士”“範士”“師範代”“最高師範”という6段階に分けている。行動指針は、それぞれの階層ごとに該当するものが細かく規定されており、その実践度合が360度評価されて人事考課のベースとなっている。各階層に応じて、5~10人ほどの同僚、部下、上司を採点する。“最高師範”である西坂氏も評価対象だ。

ユニークなのは、人事考課の指標がこれ1本であり、売り上げなどの業績は一切見ていないことだ。「『gC guide』さえ実践していれば、自ずと業績はついてくる。逆に、どれだけ高い業績を上げようが、『gC guide』に基づかないものは正しい成果とは見做さないという考え方」と安部氏は説明する。

組織ビジョンを推進させる数々の具体策

そのほか、組織ビジョンを推進させる数々の具体策が“大家族主義”“感謝”“ベンチャースピリット”“貢献のための成長”というカテゴリーに分けて行われている。

“大家族主義”には、入社1年目の社員に対し「スキル・スタンス両面の成長に責任を持ち、仕事のみならず人生に“寄り添う(Attend)”者」として担当の先輩社員が1名つく「アテンダー制度」や、月に1回全社員が少人数のテーブルに分かれて座り、業務で関わりの薄い他部署の社員とも深く語り合うことができる親睦会「おにぎりの会」がある。

“感謝”には、グループ会社による玄米菜食を基本としたマクロビオティックの食事を週3回福利厚生として提供する「ランチサービス」や、月1回、社長含む役職者以上と人事部門が人事制度の構築を検討する「オープン人事ミーティング」がある。
“ベンチャースピリット”には、社長や役員、外部アドバイザーと有志プロジェクトメンバーが新規事業の創出を検討する「みらいプロジェクト」や、自主勉強会がある。

“貢献のための成長”には、年次や役職、グレードごとに社長による“考え方”をベースとした「社長研修」や、自身の人格形成に関わる大きな体験や生い立ち、または経験した試練などについて、自身の内面と深く向き合って全社員に向けて発表する「体験発表」がある。

過去の辛い体験も全員の前で洗いざらい話す

「この体験発表は、その人自身の様々な経験を7分間のスピーチでシェアする事で相互理解を深める事が目的です。例えば両親の離婚や親族の死別といった辛い出来事も、全社員の前で洗いざらい話してもらいます。家族しか知り得ないようなことまで社員同士が知ることで、まさに家族同然となり、gCストーリーという場所をいわば“安全地帯”にする狙いがあります。そうすることで自分らしくいることができ、個々のパフォーマンスを最大化できるという考え方があります」と安部氏。この体験発表の存在は入社選考過程で明らかにされているので、社員の抵抗感は希薄だという。

その新卒の入社選考も、極めてユニークだ。まず、当初にエントリーシートや履歴書の提示を求めていない。「聞くのは名前と大学名ぐらいで、応募動機も尋ねない」という。当初提出してもらうのは、縦軸に充実度、横軸に年齢を取ってこれまでの人生を振り返る“モチベーション曲線”だけ。

「面接は10~15人ほどの社員に会ってもらい、全部で7回ほどに及びます。一貫して、“モチベーション曲線”を基にこれまで誰とどんな人生をどのように過ごしてきたのか、そしてこれからはどのように生きていきたいのかを徹底して掘り下げて聞いています。最終面接は、社長と役員、人事スタッフと残った学生4~5名で1泊2日の合宿をして、いわば“魂”レベルで相互理解します。
そうして、自分の人生を深く深く考えている学生だけを採用しています。採用基準は、その学生が入社することがその人にとっての幸せに繋がるかどうか、です」

内定後は、親を会社に招いて懇親会を行い、普段の「ランチサービス」を親にも振る舞う。「どんな環境でどんな人たちと仕事をし、どんなものを食べているのかを親御さんにも知っていただく。まさに結婚の場合と同じ」と安部氏。

上位校の学生ばかり採用できているのは、OB・OGである社員による紹介やリクルーティングにそうした大学に強い学生団体を活用していることが挙げられるというが、「自分の人生を深く考えている学生がたまたま上位校に集中しているだけのこと。実はきちんと分析できていないというか、大学名が目的ではないのであまり気にはしていない」と安部氏は打ち明ける。

企業文化が壊れて一から組織と人材を繋げ直す

同社が新卒採用を始めたのは、創業4年目の2008年度から。理念経営に徹した企業文化を構築していくにあたり、知識や能力はこれからでも、真っ白で純粋な思いの人材を集めたほうがよいとの判断による。その後、市場で“特需”が発生し役員クラスも含めてスキル重視で相当数の中途採用を行ったが、特需がなくなって業績が落ちた2013年、役員を筆頭に中途採用した人材はこぞって退職してしまったという。

「その後は、忙しいだけでネガティブな雰囲気となり、せっかくあった『おにぎりの会』にほとんど人が来ないという状態になってしまいました。まさに企業文化が壊れてしまったのです。組織と人材がしっかり繋がっていないと、そのように人によって会社が揺るがされてしまう。そこで、企業理念を一から見つめ直し、これまでご紹介してきた制度を整備し、組織と人材を強固に繋げ直してきたというわけです。そのタイミングで“gCストーリー”に社名変更もしています。それ以降、時間はかかりましたが、会社は順調に成長することができています」

社名の“gC”とは、“growth for Contribution(貢献の為の成長)”の略である。

会社名
gCストーリー株式会社
所在地
東京都江東区富岡2-11-6 長谷萬ビル4F
資本金
1億3,900万円
従業員数
80人
事業内容
施工事業、介護事業、ヘルスサポート事業
ウェブサイト
http://gc-story.com/