「家族は裏切らない」という思いで “ファミリー”と名付ける

「昔から大好きだった湘南地区を中心に、もっともっと、空と、潮風が似合う、自然体で暮らせる家づくりをしたい」。そんな思いから付けた社名の、株式会社solasio。鵠沼海岸に拠点を構える、注文住宅の設計施工会社だ。

「“湘南スタイル”の家づくりは、自分の趣味でもある」と言う代表取締役の玉造清之さん。車とバイクと海をこよなく愛する、大工職人でもある。

そんな玉造さんは、“solasioファミリー”と呼ぶ職人集団を結成し、業界の常識を覆すユニークな仕事の進め方をしている。

“solasioファミリー”とは、同社が結成した、設計や大工、左官のほか、施工に不可欠の電気・ガス、水道、内装、防水、塗装、サッシ・建具、住宅資材や木製外壁メーカーなど約30名の職人の集まり。同社設立前に大工として工務店やハウスメーカーの仕事を請け負っていた玉造さんは、その時代から付き合いがある職人のうち、腕がよいだけでなく向上心があり、いい仕事を気持ちよくしてくれる人を選び抜いたという。“ファミリー”と名付けたのは、「家族は裏切らない」という思いによる。

「こうした業者会はどこの工務店もたいていは組織しているものですが、“solasioファミリー”は結束力と目的意識が全く違うと思います」と玉造さんは強調する。

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着工前に施主を交えて パーティーを行う

何がユニークなのかというと、注文住宅の施工を受注するとまず、着工前に施主を交えてパーティーを行うことだ。

「神奈川県には、“着工式”というまじめな式を行う工務店はいくつかありますが、当社のようなパーティーというか飲み会を最初にやるというところは、聞いたことがありません(笑)」

このねらいは、何千万円も払って建てる大事な自分の家をどんなメンバーが手掛けるのかを施主に知ってもらい、職人と親しくなってもらうところにある。そして、施主も“ファミリー”の一員になってもらいたいという思いもある。玉造さんは、夏はTシャツに短パン、ビーサンというスタイルで施主とも接する。

8「普通ならお客様に対してそんなスタイルはあり得ないですよね。ですが、“solasioファミリー”には“お客様”というより、まさに仲間や家族の家をつくるという感覚があるんです
。また、親しくなった施主さんに、施工現場にちょくちょく顔を出してコミュニケーションを取ってもらえるようにするねらいもあります。それが、職人がいい仕事をする大きなポイントだからです」

そこには、玉造さんの次のような“原体験”がある。大工時代、いい仕事をして現場監督からほめられると、うれしくなったというのだ。
「職人は、ほめられるとつい木に登って(笑)、余計なことをしてしまうものなんです。釘を打つのに、1本でもいいところに丁寧に2本打ったり。まあ、気持ちの問題なんですが」

また、たまに施工現場に様子を見にきた施主から、「大工さん」ではなく「玉造さん」と呼ばれたことがあった。

「その瞬間から、やる気が全く違うものになりましたね」

施主が現場に来ないと 逆に施主に文句を言う

こうした原体験が、「まず着工パーティーで親しくなる」という発想に結び付いている。そしてこれが“ほかにない”ユニークなものであるという背景には、次のような業界事情がある。

「実は、この業界では大工などの職人は施工会社から『施主とはなるべく話をするな』と命じられるんです。余計なことを言って問題が起こることを避けるためです」

一つの施工現場を共有する職人同士でも、決して仲がいいとは限らない。中にはモラルが低い職人もいて、問題を起こされて自分に“火の粉”が降りかかってくることを避けようとするがゆえに、施主に“告げ口”をする職人がいるのだという。玉造さんもそうした現場を何度も経DSC05413験し、「面白くない」と感じていた。

「しかし、“solasioファミリー”のメンバーにそんな心配は無用です。むしろ反対に、施主にどんどんアピールしてほしいと思っています。現に、配管や電気工事など、家が完成すれば仕事した箇所が見えなくなってしまう職人は、見えているうちに施主が現場に来ないと、逆に施主に文句を言っているほど(笑)。それぐらい、自分たちの仕事を見てほしいと思っているわけです」

施主と職人が親しくなることで、施主が施工中に気になることがあれば、気軽に質すことができる。職人もすぐに対応できる。一方、それほど親しくなければ、施主は“我慢”をしがちとなり、我慢が重なればいつかクレームとして爆発する可能性が高まる。“solasioファミリー”には、そうした心配は無用。また、顔と名前がオープンになり、仕事も常に見られるということは、職人にはプレッシャーをもたらすことになる。

「決して楽しくはないかもしれませんが、そんなプレッシャーを糧にできる職人がそろっていると自負しています」

考え方を理解してもらえない 見込み客の仕事は断る

いい仕事をする“solasioファミリー”の評判は口コミで広まり、問い合わせが引きも切らないのではないかと思われる。しかし“さにあらず”のようだ。

「よく、とっておきの店は他人に教えたくないと言いますよね。そんな対象にされているようなんです」と玉造さんは苦笑する。中には、ある顧客から「家を建てたいという知人から(solasioを)紹介してほしいと頼まれたが、その人の家づくりの思いが薄いから断っておいた」と言われたこともあるそうだ。もっとも、玉造さんも、「自社の設計施工の考え方を理解してもらえない見込み客の仕事は断っている」という。施主は対等の関係との考えがあるからだ。代金を払う施主は顧客に違いないが、それは職人の優れた技術や高品質の部材を提供する対価であるという考えだ。

「なぜその高価な部材を使うのか一生懸命に説明するのですが、その理由を全く理解しようとしてくれない方は当社がお引き受けする理由がありません。したがって、他社を紹介させてもらっています」

こうした方針と、玉造さんの目が届く範囲内でしか仕事をしないために、手掛けられるのは年間6~8棟というペース。売り上げは、ずっと一定のラインを維持している。実は、6~7年前に業容拡大のため営業担当を採用したものの、納得いかない仕事が増え、また“solasioファミリー”の結束にも悪影響が及んでしまった。それ以来、拡張主義は取らないことにした。会社としての成長は、2016年から本格的にスタートさせた不動産事業で果たしていく考えだ。

また、最近になって「“solasioファミリー”の手入れを始めた」と玉造さん。“solasioファミリー”は会長、副会長のほかに数名の役職者、および一般のメンバーで構成されているが、結成して10年が経ち、長らく同じ体制であったために役職者の間でマンネリ化やメンバー間の温度差が見られるようになったという。

「そこで一旦役職を外し、全員フラットにして再度競争意識を高めてもらうようにしました。また、問題行動を起こした職人に出てもらい、新顔も加える新陳代謝も行っています。ぬかみそは時々混ぜないと腐るといいますが、組織も同じだと思いますね」

玉造さんのチームマネジメントには、湘南にふさわしい風通しのよさがある。

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会社名
株式会社 solasio
所在地
神奈川県藤沢市鵠沼海岸5-11-24
資本金
500万円
従業員数
5名(2016年7月現在)
事業内容
注文住宅の設計施工
ウェブサイト
http://www.solasio.co.jp